419 探査機が惑星に行き砂採るに台風も豪雨も制しえず★ [文芸(短歌・俳句) 時事]
随想コラム 目を光らせて NO.419「朝日歌壇・朝日俳壇」から。
歌壇 期間:2019.8.4~8.25
探査機が惑星に行き砂採るに
台風も豪雨も制しえず ★
★題目;朝日新聞:2019.8.04
岡田独甫さん(三原市)の入選作。
鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集
「ありがとう。おもしろかった」から。 作品 30
「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこん
なものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいた
ので絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。
皆様、ご多幸を。(木谷 啓)
朝日歌壇 2019.8.04
バラ 18
★歯の裏の磨き残しのざらつきを舌に触れつつゆく投票所
(長野市)原田りえ子
★原発が争点六位の選挙でも線量ポストは律義に雨に
(福島市)青木崇郎
★子供らの戦争ごつこ何故かくも
楽しさうなる死んだ振りして (京都市)田畑益弘
★給食に鯨肉入りのカレー汁よく出たものだ戦後の日々は
(春日井市)伊東紀美子
★夜陰にまぎれ山伝いにハンセン病の男寺に來けり
(三原市)岡田独甫
薔薇 19
★原発が都市生活と産業を人身御供に稼働続ける
(川崎市)小島 敦
★かば焼きの匂いばかりをふりまいてアベノミクスも今
年で八年(大和郡山市) 四方 護
★時折に戦死の父を語る母時折忘る百歳の歳
(長崎市)小旗 くみ子
九十九里の波寄るあたり石と見し蟹立あるきまた石と化し
(東金市)山本寒苦
はやぶさ2ほどの技術があってなおデブリ石には思い
届か (郡山市)柴崎 茂
今号のヘッド作品に選定した岡田独甫さんとこの作者ははやぶさ2の
技術卓越に感嘆して、これほどの技術を持つ日本人が、台風も豪雨の進
路変更や原子炉溶融後落下したデブリ処理に手を出せないでいる、なん
とかならんかと嘆いている。
母さんの子でよかったとメール來るうれしく不気味で
もある今宵 (松山市)宇都宮朋子
薔薇 20
剣岳明日攀づべしと望みつつ雪渓の水ごくごくと飲む
(枚方市)秋岡 実
明日念願の剣岳に登るぞと、青壮登山家、その山を見上げながら雪渓の水を
掬ってごくごくと豪快に飲む。足腰の弱りし者は羨望の眼で。
夫の手が幾度触れけむ梅雨の夜の主なき机の三角定規
(三鷹市)増田テルヨ
★臭いものにふたの疑い知らぬふり公文書記録を残さぬ官邸
(小平市)北川泰三
探査機が惑星に行き砂採るに台風も豪雨も制しえず (三原市)岡田独甫
どの葉にも小さき水玉のかがよひて大蓮咲けり 一天四海 (岡山市)梶谷基一
一天四海は蓮の名。葉も花も大柄な蓮。咲き誇る様につい眼が行く。
★劉暁波逝きて二年噴き出ずる伏流水が香港浸す
(福山市)武 暁
朝日歌壇 2019.8.11
★生き物も民意も埋めてたんたんと辺野古の海は陸になりゆく
(前橋市)荻原葉月
★被爆証言聞きにしあともなお核が抑止力として要ると
君らは
(アメリカ)大竹幾久子
物言えぬ唇の右端緩ませて母は私におはようをいう
(河内長野市)高野映子
祖父健てし立派なる墓を不便だと都会住まいの孫が
撤去す
(三原市)岡田独甫
発表会ピアノ弾き終え夕食に蝶ネクタイを着けて来し孫
(東京都)岡 純
羽の生えてきそうな肩甲骨をして少年はプールサイド
に並 (奈良市)山添聖子
★やめるとはかくも難しまず原発EU離脱男系継承
(朝霞市)青垣 進
★故郷はあまりに遠く棄権する原発事故の町に生まれて
(いわき市)多田千恵
★戦闘機四十分の一の価値ハンセン訴訟の補償総額
(川崎市)中村真一郎
おほぜいの飛騨の匠がゐたごとく無数の絵師がアニメを描く
(相馬市)根岸浩一
★武器を以て先住民を追いたりし出て行くべきは君らか
知れず
(水戸市)中原千絵子
★「玉音」と「玉砕」を並べみるときに日本語がわから
なくなる僕は
(国立市)佐藤 健
★原爆を日本が作ったと仮定して使ったかと問わる使ったと
思う (アメリカ)大竹幾久子
こんな問いを発する奴も奴だが、よく考えもせず「使ったと思う」な
どと即答するのはどうかと思う。それじゃ奴の類になってしまう。奴に
はこう言おう。日本が先にあなたの国に原爆を落したとしたら、どうな
ったと思う?瞬時に米国本土は死屍累々、死の都がいくつもできて、生
き残るにしても、被爆者は顔や背に凄まじいケロイドを残していたはず
よ。今も日本人は一度はトルーマンにこの経験をさせたい、と思ってい
る。人のいのちを軽々しく扱った最低の大統領だった男になあ。
★わが記憶三歳半の終戦日死ぬまで消えぬ最初の記憶
(新居浜市)越智勝利
京アニに救われし子の数多あり絶叫聞こえる世界の国から
(三田市)早良たま
★戦争を語ることなく戦友の墓参を続け父は亡くなる
(三郷市)木村義煕
CMでスライスされつつ観る映画居間と異界を行きつ
戻りつ
(調布市)柳沢英子
アニメーションエンドロールにその名前載るはずだった多
くの若者 (観音寺市)篠原俊則
★日本の未来を決めるのはあなた そう、投票に行かない
あなた (高松市)嶋田章平
★幾度か日の丸振って見送った日が悔やまれる八月が來る
(阿賀野市)小林重雄
★何だお前、こんな所に居たのかよ同級生の墓に出くわす
(沼津市)石川義倫
★「バカヤロウ」と呼べば小さな額縁の中に一人で友は
笑むのみ(秋田市)佐々木義幸
亡き妻の最後の言葉「うるさい!」を子と笑ひつつ
かなしみつつ言ふ
(江田島市)和田紀元
今は亡き妻の臨終に一家郎党が集まっていた。静かに息をするだけの逝く
人をいいことに孫らがガヤガヤとやったのだろう。すると、そこへベッドの
妻が突然、「うるさい!」と一喝垂れ申した。一同びっくり。
今は昔、眷属集う機会がくる度に、この時の妻の叱声が繰り返される。
笑いと悲しみとともに。
(つづく → NO.419-2)
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