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387-2 花冷えと思へ白刃の我が心* [文芸(短歌・俳句) 時事]


   随想コラム「目を光らせて」NO.387-2「朝日俳壇から」

            


          期間:2018.520~5.27


 



       花冷えと思へ白刃の我が心


 


  *題 目: 朝日新聞2018.5.13 (船橋市)斉木直哉さんの入選作。


                  アオウ ヒコ


                          180509Iris2.jpg


                       水彩画家 酒井 健 の作品から 180509  Iris


      



                                   朝日俳壇 201.2


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  第一糸仕損じ蜘蛛の逆さ吊り


              (川越市)佐藤俊春


 よく見かけるシーンである。これから我が家を作ろうと庭の枝から、


蜘蛛が一番糸を風に乗せて流すのだが、旨く枝に絡みつかなくて失敗。


糸の送り手の蜘蛛は自らの助け糸に乗ったまま宙に逆さ吊になって漂


っている。こんなことは日常茶飯事、しばらくして蜘蛛は二番糸を流


し始める。今度は旨く行く。次々に旨く行く。


 


   大いなる股間輝き初節句


             (矢板市)菊地壽一


 端午の節句には腹掛けをして鉞(まさかり)を担いだ金太郎が飾られ


 


 る。(広辞苑)とある。ここの家では、プクプクと太った童子が初節句


 


 とあって、素肌に金太郎の腹掛けだけを付けられて、縁側に座らせたの


 


 であろう。男座りをさせられるとそこには大いなる股間が輝いて頼もし


 


 い限りでありました。


 


 


   夏きざす海の音するネックレス


                    (平塚市)日下光代


 


 夏になり胸の空いたブラウスを着ればネックレスが欲しくなる。でき


 


 れば、海の音がするのがいい。小さい貝を繋ぎ合わせた首飾りならぴっ


 


 たりということか。早く夏よ来い。


 


 


   青空を見上げて無言鯥五郎


                  (霧島市)久野茂樹


 


 鯥五郎さんてどこのお方? 歌舞伎役者にいなかったかな。人間じや


 


 なくハゼ科の海産の硬骨魚。有明海の沿岸の泥海に棲む。全長20セ


 


 チ、両眼は接近して頭上に突出。干潟を這って進む。美味である。


 


 引き潮の時、潟スキーを滑らせて漁師が太い掛け針を糸に付けた釣り


 


 竿を揮って「青空を見上げて無言鯥五郎」を狙うのだ。ムツゴロウは突


 


 っ立っているものだから手慣れた漁師の手に掛かれば、あっという間に


 


 掻っ攫われ、囚われの身になる。


 


 


   母の日や海に苺に母の文字


                 (高松市)桑内 繭


 


 なんといっても母は偉大なり。その証拠には、多くの字にはこの母の


 


 部位が含まれているのだ。父はボオーとしているから、そのことにはな


 


 かなか気付かない。


 


 


   花は葉に力蓄へ始めをり


                 (高山市)大下雅子


 


 すでに葉桜、と言いますよね。あれだけの桜の花を満艦飾で付けた後


 


 です。ぼんやりしていたら、来年の桜の花は咲きません。葉桜というは


 


 、来年の桜のために力を蓄えはじめているんです。


 


 


   心までみどりに染めし若楓


                  (寝屋川市)岡西恵美子


 


 なんと清々しい緑色に染まった若い楓であることか。心が緑に染まり


 


 ゆくのを感じます。


 


 


   


           朝日俳壇 2018.5.27


            


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    母の日や孫に余命を問われけり


 


                  (越谷市)荒井高四郎


 


 おばあちゃんはいつまで生きるの?」というのが、典型的な問いら


 


 しい。「そうねえ、孫ちゃんが大学を卒業してまもなくよ」「あ、そう。


 


 となるとあと何年後かな」と計算するのが面倒くさくなるらしい。


 


 「じゃ訊くよ。孫ちゃんいつ結婚するの?」これには返事がない。答え


 


 が困難であるらしい。


 


 


    大岩に袈裟の如くに藤垂るる


 


              (群馬県東吾妻町)酒井大岳


 


 先達の誰かがこの大岩むき出しじゃあまりに殺風景じゃよ、と嘆じ


 


 のがはじまりで、藤でも生やそう、となったのか。いつしか藤は根から


 


 岩の上に這い上がり、蔓は人の腕ほどになり、それから垂れ下がった枝


 


 の数々から側枝が伸びに伸び、今では袈裟のような紫の直垂になってい


 


 る。こんなにまで大きくなることを、かの先達は想像したであろうか。


 


 


   桐咲いてむらさきの風紡ぎけり


 


                 (加古川市)森木史子


 


 桐の木は高く上に伸びる喬木だから、その花も高所に咲き、下ばかり


 


 見て歩くと、藤の花には出会えない。上を向いて藤の花に出会えたら、


 


 そこで咲く桐の花の紫が風にゆすられて大きく揺れているのに出会う。


 


 


                 


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   てふてふに鯨のごとき古墳かな


 


            (茨城県阿見町)鬼形のふゆき


 


 蝶々が巨大な古墳の上を飛ぶ。あの蝶から見下せば、下に見る古墳は


 


 おそらく鯨がねそべっつているように見えることだろう。


 


 


 


   すぐ横は地震の断層代を掻く


 


            (熊本県菊陽町)井芹真一郎


 


 この稲田の横には地震で出来た断層があるんですよ。間もなく田植え


 


 のころとなりますから、こうして代を掻いているんです。


 


 


   食べ終へし葉の大きさよ柏餅


 


            (高槻市)会田仁子


 


 気が付いてみると、柏餅そのものは小さなものですね。それにひきか


 


 え、食べ終わってみる柏の葉の大きいこと。広いこと。


 


 


 


   地震の城持ち上げそうな楠若葉


 


            (熊本市)山澄陽子


 


 若葉の頃となって楠の木から出る若葉の勢い。地震で壊れた熊本城を


 


 持ち上げそうな力を感じます。


   


 


        (2018.7.01)


 



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