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387 李白杜甫何するものぞ花見酒 [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」 NO.387「朝日歌壇・朝日俳壇から」


        俳壇  期間:2018.5.6.~5.27


 
    李白杜甫何するものぞ花見酒


 


 


   *題 目: 朝日新聞2018.5.6 (岡崎市)沢 博史さんの入選作。


 


                  アオウ ヒコ


 


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      洋画家 青沼茜雲 の作品集から   50.  「日本の屋根と鳩」


          フランス・サロン・ドトンヌ会員  ・英国王立美術協会名誉会員


       ・ノルウエーノーベル財団認定作家  ・世界芸術遺産認定作家


                                    ・日本代表殿堂作家


 


 


                    朝日歌壇・朝日俳壇から」


 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


 


取った作品を選びコメントを付けています。コメントは文芸上


 


範を越えることがあります。作品の頭に付い作品は時の


 


が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を無視し国会の存在を


 


いがしろにするさま放っておけぬとする市民の声であり叫びであり


 


す。


  これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、


 


全作品を網羅、 録しています。これらの作品に対しては作者真摯な


 


叫びに読者の素直に従うべししてコメントはつけておりません。


 


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


  


            朝日壇 201.0


 


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  ★靖国の遺児てふ絆し青き踏む   福岡市) 下村康彦


 


 


  母亡くて弟亡くて桜かな       (姫路市) 伊達冨美子


 


 若くして父が逝き、その後は母の手一つで、兄弟二人は育てられた。その母 


が逝き、仲が良かっ弟が先に亡くなった。ふたりがいないこの春、桜は爛漫


と咲いたが,寂しさが余りある桜だった。


  


 


    ある時は親に逆らい卒業す             神戸市) 岸下庄二


 


 長い学生時代の年月を父母は大変上努力と愛を傾けてくれた。親の心子知 


らずで、言いつけに き、親に逆らったこともたびたびあった。そして、このた


びの卒業。なんと、ありがとうございます。この御恩は一生忘れません。


 


    黎明の驟雨浮世を朧へと               秋田市) 堺 栄輔


 


 今朝の空は厚い雲に覆われて、驟雨が一面に降り注ぎ万物が濡れそぼって


いる。この浮世を朧包みはじめている。


 


  春愁や街にひとつの書店消え 東京都  青木千禾子

 何かと気が晴れずモヤモヤが続くこの季節。街にただ一つあった書店
が閉店したのだ。気晴らしに本を眺めに行くこともできなくなった


  


   それぞれに花の余韻の吉野山   芦屋市  奥田好子


 


 山桜が主体の吉野山。ソメイ吉野の派手な趣向とはちがって、咲くにしろ、散


 るにしろ、花の余韻感じさせるところがある。今年は行かなかったが、来春に


は訪れてみたいものだ。


                 


    のどけさの先に果てある命かな神奈川県松田町) 山本けんえい


  今、老年の境地にあり、世のためにしかるべく尽くした後の安堵感か
らくるのだろうか。
日々、のどかさを感じて過している。だが、この先
にはいのちの果が待ち受けていることを
漠然と感じていることも事実だ。

 
李白杜甫何するものぞ花見酒    岡崎市)  沢 博史

 中国の詩人、李白、杜甫のお二人さん。酒豪であったらしい。飲むに


つけ、呷るにつけ、漢詩の傑作の数々が溢れるように流れ出た。さて 


当方の御同輩、花見に繰り出し大いにもうぞ、中国の酒仙に負けず 


やりましょうず。李白・杜甫など目じゃないよ、と気張った迄はよか


 たが、飲めど尽せど、傑作は疎か、歌も句の一つも一向に出て来ない。


   花屑に小魚群るる河口かな   西宮市)  黒田國義 

 春爛漫、花びらが散り敷き、川の上流では花筏となって流れ下ったが
行きつくところは大川の河口。このあたりになると、花筏は汚れた花屑
となって浮かび、餌だぞとする小魚が群れている。上流で、桜を愛でた
数奇人よ、かくのごとき花筏の成れの果てを想像しておくれだったかど
うか

  
  鶯やその拙さも個性なり 筑紫野市)  二宮正博

 ものの出来具合を評価するに「うーん、個性的でいいですね」という


のがある。この場合、作品の出来がてんでんばらばらでなんとも収束し 


かねる啼きを「個性」の所為にしてしまう。鶯の啼きも完璧な啼きが期


待されていて、練習中の若鳥の啼きの拙さを耳にして、下手だね、若い


な、笹鳴きだねえ、と言うべきところを「個性的だな」としたり顔で言 


う。というのを個性的評論家というのかも。


 


 


 


      朝日壇 20113 


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     忘れ潮埋め尽くしたる花の屑

兵庫県太子町)  一寸木詩郷 

 


 ここでも花筏の成れの果てが描かれている。潮が引いて干潮になった


砂浜に残った「忘潮」に取り残された花の屑が干からびている。


 


  本当は父の揚げたき凧なりし  (徳島市)椎野たか子


 


 車いすに乗った父を押して、この凧揚場に来ている。そこで私が凧


準備し、糸を繰って、どうやら宙空に凧を浮かせることに成功した。


はそれまでの私の所作を食い入るよな目で、じいっと見詰めていた。


 分かっています。父は本当は自分で凧揚をなさりたかったのです。


   幸せは崩れやすくて紅牡丹   (姫路市)上原康子


 今、本当に幸せだと思ったら、その瞬間を大切にしましょう。なぜ


ら、幸せはそう長きしないから。ちょうど庭に花開く紅牡丹のように


盛期は短く、その間に一雨あったりしたらもっと短くなる。


                                          春愁を重ね束ねて括りけり  松戸市 をがわまなぶ 


 そんなにいくつもの愁いを背負いながらこの春を過ごされたのか。時


過ぎて春愁の状を保つ必要がなくなり、さあ一時も早く捨て去りま


しょうと重ね束ねて括りました。緩んだりしないように、きつくきつく


縛りました。


  鯉のぼり太刀も兜も戦わず  (日立市)加藤 宙


 


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   花冷えと思へ白刃の我が心  船橋市) 斉木直哉 


 人の死に際して、これほどの心身の冴えが到来するのか。私を衷心か


ら知り尽くし、暖く理解し、認めてくれたお方であるだけに突然の逝


去には惜別の思いが募り、あの時から私の心は研ぎ澄まされた白刃のよ 


うに、人を寄せ付けないまま、冷たく静謐に鎮まりかえっている。この 


異常ともいえる私の心身の冷え込みから、私はいつ脱却できるのか、覚


束ないの旬日である。


  そうだ、この私の心の冷えは、このところの春の花冷えがもたらした


ものだと思うようすれば、なんとか収拾がついてくれるかもしれない。


 


 


   年年の治山歳歳の花うぐひ  (松江市)三方 元


 永らく治山の仕事をされているのか。そうであれば、年年歳歳とふ重


語彙を軽々と使て山の花を讃え、詠じることができるというもの。


桜の花に加えて鶯も啼いていますよ、と告げる余裕も。


   新選者兜太の後は恐ろしき   青梅市) 津田洋行 


  朝日俳壇の長老、金子兜太の死去に伴い、朝日新聞は俳壇の新選者


一人選ぶ必要に迫れることになった。ただ、兜太の選句が普通の 


選者とは違って、斬新な切り口での選句に特徴があったので、新選者 


もそれを踏襲することを願う人は数多いようだ。現在、朝日俳壇


入選者はほぼ、常連に占められており、選者が変わらないから、入選 


者も変わらないと言えないこともない。よって、朝日新聞社は、俳句


作りに斬新な世界を切り開いてる斯界の新人に白羽の矢を立ててい 


ることだろう。 


  朝日の俳句読者が兜太の後は恐ろしい、という気持ちには、新機軸


の俳句が求められるぞ、という期待、また、今後われらはそれに応じ


れるだろうかとする一抹の不安を抱いのことであろう。間もなく


7月、颯爽としての登場である。期待して待ちたい。


 


  釣り人や花の盛りに背を向けて 東京都) 家泉勝彦 


 釣り場の背に何があろうと、釣り人の目は水に浮かぶ釣り具の動き以 


に目を転じるこはない。後ろには満開の桜がありますよ、としつこ


く話し掛ければ、チョイと振り返ることはあっても、二度とは振り向か


ない。花なぞ、あってなきがごとしなのである。


 


 


         つづく → NO.387-2


 


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