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 417-2 雷鳥の子らが寄り來し登山靴動かさずいて静寂満ちる★ [文芸(短歌・俳句) 時事]

 


  随想コラム 目を光らせて NO.417-2「朝日歌壇・朝日俳壇」ら。


      歌壇 期間:20197.2128


 


    雷鳥の子らが寄り來し登山靴動かさず


      いて静寂満ちる  


   題 目;朝日新聞:2019.7.28


           重近 徹さん川口市)の入選作。


 


                      アオウ ヒコ


 


朝日歌壇 2019..2104-ronsar14.jpg


薔薇     


  田植時明日香の里の水田には墨絵のような陵映る


     水戸市中原千絵


 ひとすじの茜の雲を従へて梅雨の晴れ間の月山


 昏れゆく           (山形市) 渡海美和


        


辺野古には軟弱地盤伏在す断層も二本難工事必至


     


      (名古屋市)諏訪兼位


 


 体重で火葬料金決まります老猫ミータン二・五㌔


 


     (東京都)村上ちえ子


 


 秋、母に見せられざりし渦潮を形見のバッグと


 橋より眺む   


          (津市)土屋太佳子


 


 一度一緒にあの渦潮を見に行きましょう、と母と約束していたのだが、


ついに果たせず、今は形見になったバッグを抱えて、これがそうよ、鳴


門の渦潮よと見せてあげました。


                 


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                  ばら  


 


 


 ザック、ピッケル甥に送りてがん病める我が終活の


  手始めとせむ        (横浜市)三沢かおり


 


やわらかな渚日に日に直線と変はりはてても辺野古


  は辺野古        (鹿児島市)池之迫静男


 


 福島を逃れ八回の蝉しぐれ姉妹は京の丹波の言葉


                (綾部市)阪根瞳水


 


酷暑でも投票に行け若者よ廊下に何かが立たない


  うちに    (高崎市)小島 文


  


 夭折の兄の棺とリヤカーにちょこんと幼き吾と弟 


    (福島市)美原凍子


 


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               薔薇  


 


 「おなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」と書き


  し母と子飢えて死ににき   (静岡県)半田 豊


 


さみだれにけぶる虚しき原発の炉心底ひに息潜むデブリ


     (茂原市)植田辰年


 


 眠れぬ夜過ごして命を見送れる娘は安楽死のカウンセラー


 なり      (アメリカ)中条喜美子


 安楽死を国策として持つ国持たぬ国と今は分かれる。高齢化が進み、


では回復不能の難病に侵される人も増加し、安楽死を願う患者も


して存在する。娘さんは昨夜は不眠で安楽死患者の命を看取ったよう


だ。彼女の母はその姿を見て、カウンセラーですもの、とその仕事へ


クールな理解をしている。


 


 宿題の枯草五キロ背に負いて登校したる戦後昭和期


       (坂戸市)長谷川哲夫 


 虫除けによしとし聞けば亡き夫の藍の作務衣を着る


 懐かしさ        (大分市)岩永知子 


 


六尺の青大将を屠りたる雉子昂然と大地をゆけり


       (福島市)青木崇郎


 


 草原を行く6尺余の蛇、青大将を雉子(きじ)が上空から見つけて急


降下し、獲物にせんものとして闘争に入った。図体は太い青大将は無毒


の蛇として知られているのか、鋭い嘴と強健な脚の爪を武器にする雉に


は頭を中心に攻められて難なく屠られたようだ。勝者の雉は昂然と大地


をゆけりとあるから獲物の青大将の首を咥えて引きずっていったらしい。


 


 残されし桑の古木に涼とれば葉ずれさわさわ蚕の


  匂い立つ        (安中市)鬼形輝雄


 


 


        朝日歌壇 2019.. 2 8


             


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           バラ    


 


共通語でシマクトゥバでアメリカ語で礎に誓ふデニーに


  どよめき      (沖縄県)和田静子


 


ャッシュレスの意味も分からぬ高齢の村がひっそり


  増税を待つ       (西条市)村上敏之


 


 人の世は虚虚虚虚と鳴くホトトギス七月の空裂きて


  また鳴く      (福島市)美原凍子 


 


戦場のトラウマで心病む人が今も銃持ちわが町に住む


      (アメリカ)大竹幾久子


 


脱退の国際連盟おもふなりそののちの道 鯨への道


     (厚木市櫻田 稔


 


逃げ惑うわれらは兎十三ミリの機銃に追われし夏の畦道


     (北杜市)長馬亜夫


               


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薔薇  

 


 一年もあの世に住んで退屈しそろそろ帰ってくる頃か母


          (佐世保市)近藤福代


 


 ボリュウム上げ監視車がゆくさくらんぼ真っ赤に熟


      (仙台市)沼沢 修


 サクランボ狩に出かけたことがある。サクランボが赤く熟れるころ


没するのが盗人の類。そう簡単にはいかぬわいと、農家は金属の網で


っぽり果樹を覆う投資を終えている。東根の町は真っ赤なさくらんぼ


名高く、最盛期にはボリュウムを上げた監視車がいつも町中を行き交


ている。


 


 伯母逝きて生まれるラインいとこ会皆で見守る


  一人居の伯父      (宝塚市)河内香苗


 


 雷鳥の子らが寄り來し登山靴動かさずいて静寂満ちる


     (川口市)重近 徹


 


 アルプスの山岳地帯、ここで繁殖する雷鳥は冬季には白く羽毛を変え


るの登山家は雷鳥に遭遇するのを楽しみにしている。雷鳥が繁殖を終


え、そ子らが姿を見せるのは夏のシーズンであるのか。登山家は雷鳥


の子らがヨチヨチ歩き回るのに遭遇する機会が増えるようだ。この場面


はその機会を捉えたようで、登山靴を動かすことなく固まってしまうに


如くはなしとしている。そこに到来するのは静寂そのもの、作者は「静


寂満ちる」とした。


 


 チェロひとつわが子のやうに押さえつつ電車に座る


 ひとのまなざし   (広島市楯田順子


 


 南蛮の人を描きたる垣根からくちなし香る堺の街は


     (越前市)内藤丈子


             


 



        (2019.10.01)


 


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   随想コラム 目を光らせてso-netブログ


   URL:http://columneye.blog.so-net.ne.jp/


 随想コラム「目を光らせて」は2001年4月からHPに開設、以来


2010年までまるまる9年をHPの形式で、世の中の森羅万象を随想


コラムの対象として見据え、エッセイを綴ってきました。歴史、政治、


文化、芸術、スポーツなどのほか、バラや蘭などの園芸を楽しむ人生


の素晴らしさを称えてきました。


 2010年7月、ブログ方式に転じましたが、内容的には変わらず、


HP的な構成で推移して2019年の令和の今日に至ります。


             (アオウ ヒコ  Aou Hiko)


 


 


 


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