417 六尺の青大将を屠りたる雉子昂然と大地をゆけり★ [文芸(短歌・俳句) 時事]
随想コラム 目を光らせて NO.417「朝日歌壇・朝日俳壇」から。
歌壇 期間:2019.7.7~7.14
六尺の青大将を屠りたる雉子
昂然と大地をゆけり★(雉子;きじ)
★題目;朝日新聞:2019.7.21
青木崇郎さん(福島市)の入選作。
アオウ ヒコ
「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんなも
のでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので絵を
描ける間は描き続けられるといいなあと思います。皆様、ご多幸を。
(木谷 啓)
「朝日歌壇・朝日俳壇 から」(趣意)
朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で
切り取った作品をそれぞれに精選し、必要に応じて,コメントを付
けています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。
作品の頭に★印が付いた作品は時の政権が推進する前のめりの右
傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにする様
を放置してはおけぬとする市民の声であり、これを矯めたいとす
る意思表示でもあります。
これらの作品はここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うこと
なく、全ての作品を漏れなく本欄に採録しています。
また、これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに
読者の耳,素直に反応されることを願っております。
文中、敬称は省略しています。(筆者)
朝日歌壇 2019.7.07
薔薇 1
★年金が命綱だという人は登場しない国会中継
(筑後市)近藤史紀
★100万に驚き200万デモを羨む 香港の若者たちよ
(近江八幡市)寺下吉則
★大規模デモが政府の方針変えさせた驚きと希望この国
に無縁か (鈴鹿市) 森谷佳子
同世代とわかれば後は一本道話題は脱脂粉乳の味
(神戸市) 高寺美穂子
あがかずに逝きたく思へど叶うまじあがく末期を数多見て来し
(三原市) 岡田独甫
命が肉体から離れる時はそうすんなり行くものではない。生あるものは人に限
らず末期の苦しみを残して旅立つようだ。この作者は寺の和尚だから、多くの
人の末期に立ち会い、あがき苦しむ姿を見てきた。自分ははあがかずに逝きた
いと思うのだが、どうもそうはいくまい、叶うまじと諦めている。
★憲法はアクセルじゃない逆走と暴走防ぐ非常ブレーキ
(和歌山市)佐武次郎
★生きるとはこういうことだ「香港の自由守る」と百万のデモ
(春日井市)伊東紀美子
★「チョットコイ」と鳴く小綬鶏に誘われて林に
入ればまだ積む汚染土
(福島市)澤 正宏
ありがとうごめんなさいと介護するもしかしてこれ
黄金の日々 (東京都)篠原めぐみ
この言葉を歯科医院の女性看護師の口からも、しばしば聞くように思
う。作者は老人病院の介護士か。この言葉を口にして日々介護にあたれ
ば、老人患者はおとなしく身を任せてくれる。こんなに楽なことはない。
むしろ、黄金の日々ではありますまいか。
★下北の菜の花の咲く横浜の山の向うの村の原発
(三沢市)遠藤知夫
青紅葉ひかり透かして清らなり昼飲みちょっと
後ろめたいな (三田市)相良 たま
陽の光が青紅葉を透かして清らかな緑を滴たらせる昼さがり。この景
色を称えてひと時、酒盃を上げんかな、とするのはどうだろう。後ろめ
たい思いもするが、いけませんかな。この機会を逃すのは本当に惜しい
のです。
朝日歌壇 2019.7.14
★笑み浮かべ棺に深く眠る兄予科練のことついに語らず
(神戸市)森山 功
★ノモンハンガダルカナルにインパールレイテオキナワ
ヒロシマナガサキ (八王子市)間渕昭次
ああ、こうして地名をカタカナにして羅列しただけで、太平洋戦争の
無惨な傷跡が次第に膨らみ、遂には我が国の敗北へと移り行くのを思い
知る。最後はピカドン2発でとどめを刺されて。
★せかせかと読み急ぎゆく総理大臣しみじみ語る
声が聞きたし (水戸市)檜山佳与子
百の桶百のしろたへ流れをり国崎ゆかしき鮑と海女と
(津市)中山道治
★原発をある日突然語り出し今は記憶に鍵かけし母
(久留米市)塚本恭子
餓鬼岳の雪消の水が音立てて乳川に奔る安曇野の初夏
(熊谷市)飯島 悟
父が逝き呼ばれるように母も逝きわたしはひとり
介護ロスの日々 (前橋市)町田 香
晩年の父母の介護に専念してきた私の十数年。その対象の父が逝き、
そして母が続き、二人が居なくなった私一人の日々。そこに在ったもの
がきれいさっぱり消え失せた今、介護ロスに包まれる日々に生きるこの
私。無常なり。
鮎料る男の貌の美しくときにせせらぎ聴き澄ますなり
(京都市)田畑益弘
「しぶとし」は命に向くる褒め言葉告げられし余命
三月超えたり (春日井市)新海広之
あなたの命はしぶといようですな、とかかりつけの医師が褒めてくれ
たので、図に乗って「どのくらい?」と訊けば、「そう三月くらいは」
と答えてくれた。わが命、しぶとく生きて、そう、天城越えならぬ三月
越えを過ぎ、まもなく百日に手が届く。嬉しいことなり。
(つづく → NO.417-2)
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Aou Hiko
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