随想コラム 目を光らせて ＮＯ．４４６－２

 

  随想コラム「目を光らせて」ＮＯ．４４６－２

                        「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

　　　　　　　　　　　「コロナを詠んだ歌人たち」

　　　　　　　　　　

    　　歌壇　　期間：２０２１．５．１６～３０

 

 

　      ローンレンジャー白馬童子に憧れき

 

　　　  白馬が遂に桜花賞勝つ＊　

　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　＊題　目: 朝日新聞： ２０２１．５．１６　朝刊

                  （枚方市）秋岡　実さんの入選作。　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　              アオウ ヒコ　　

　　　　朝日歌壇 ２０２１.５.１６　　　　　　　

　▼ふくしまの幻の魚になるも惜し請戸の海の「どんこ」の煮付け
　　　　　　　　　        （国立市）半杭螢子

　★「処理水」の入った瓶を持つ総理両手に真白き手袋をして
　　　　　　　　　     （観音寺市）篠原俊則

  ★手に負えぬ物を作りし人間の後始末する母なる海よ
　　　　　　　　　  （大津市）秋山一美

　・オーガスタ18番のグリーンにキャデイ礼して勝者を追えり
　　　　　　　　　  （常陸大宮市）和田行男
　
  ▼パリパリのスーツ着て靴音ならし一年遅れの入学式へ
　　　　　　　　    　（富山市）松田わこ
　　
　▼自助・共助その後に公助と説く人の下でひたすらワクチンを待つ
　　　　　　　　  　（松山市）谷　茂男

　▼授業中ねむるユメノを叱れない夜通し母の世話をしてゐた　　　　　   
　     　　　　 　（浜松市）松井　惠

　・流木に友と腰かけセブンスターくゆらせた日の遠い潮騒
　　　　　　　　　（交野市）西向　聡

　▼年寄りに手を焼くらしいレジの人ぼくも何度も念を押される  　　
　　　　　　　    （川崎市）小林冬海

　▼コロナ禍のアジア人われスーパーで目をそらす人避けて行く人
　　　　　　　　　（アメリカ）大竹幾久子

　・麦一斗哀願して得し屈辱を父は遺せり買い出し日記に
　　　　　　　　　（浦安市）中井周防

　・甲州の蕎麦屋に吾子の働くを会いに行きたり紀州の父は
　　　　　　　　　（橋本市）原　鉄也

　▼こんなにも軽い言葉であったとは「宣言」だとか「徹底」だとか
　　　　　　          （神戸市）松本　淳

　▼固定電話いのちの我は押し続けて四日めつながるワクチン接種日
               　    （松戸市）猪野富子　

　▼移り住み二度目の春もマスク顔人波よけて吾は旅人

　　　　　　       （東京都）佐藤雅子

 

　▼「ワクチンを打ったからね」が「いただきます」の挨拶となりマスクを

　　　　はずす　　　　　（アメリカ）東野由佳

 

　◎ローンレンジャー白馬童子に憧れき白馬が遂に桜花賞勝つ　　　 　　　　　　　　

                     （枚方市）秋岡　実

 

　　　　　　　　　　　　　　朝日歌壇　２０２1．５．２３        

 

　・アジアンであることが何で悪かろう桜はなびら四月の黒髪

　　　　　　　　　　　　　　（アメリカ）ソーラー泰子

 

　▼高齢者三千六百万分の一として受くコロナワクチン

　　　　　　　　　（大阪市）末永純三

 

　▼無策とは言わぬが足掛けこの二年例のマスクにイシジンうちわ 　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　（堺市）  芝田義勝 　

　　　　　　　

　▼面会の母はときどき鰍沢尋常小学校に居るらし

　　　　　　　　  （東京都）村上ちえ子

 

　・じゅ業中時計ばかりを見ていたよおばあちゃんが手じゅつする日に

                      （向日市）望月和奏

 

　▼三度目の緊急事態宣言を機にオカリナを吹きはじめたり

　　　　　　　　  （蓮田市）平田栄一

 

　・噛みしめるレモンビールの爽やかさふっと泣きたい春の夕暮れ

                      （直方市）永井雅子

 

　・さくらいろ愛しきまでに透きとおる駿河の春の桜蝦漁

                      （浜松市）石津谷　深

 

　★福島だべ辺野古の土砂と同じだべ寄り添うと言う日本政府

　　　　　　　　  （所沢市）風谷　螢

 

　★プラゴミが浮遊しいる海洋に間もなく始める処理水投棄

　　　　　　　  　（長野市）関　龍夫

 

　▼コロナ下に無人無音の聖火ゆく何を知らしめ何を繋ぐや

　　　　　　　    （長野県）千葉俊彦

 

　・金魚田の青き水面に雲映り雲の中より金魚湧き出づ

　　　　　　　  　（天理市）池田士郎

 

　▼「路上飲み」「マスク警察」「帰省狩り」コロナは日本の言葉も汚す

　　　　   　　　　　（観音寺市）篠原俊則

 

　▼学童の顔の見えない仕切り板二人席でも意味ないランチ

　　　　　　　   　　（高槻市）富樫いなほ

 

　▼三度目となれども対策は変異せずデジャヴのごとき夏がまた來る

　　　　　　　　   　（西東京市）服部秀星

 

　・雨音がやわらかだったふるさとの藁葺き屋根よ麦秋のころ

 　　　　　   　　 （岐阜県）諏訪桂子

 

　・貝がらの潮騒を聞くように子は白きギブスに耳を当ており

　　　　   　　　 （奈良市）山添聖子

 

　★「処理水の放出」と言い「汚染水の遺棄」とは言わぬ為政者

       たちは　　　  （観音寺市）篠原俊則

　　　　　　　              

 

 

              朝日歌壇　２０２１．５．３０

        

   ★「処理水」を放出するしかできぬのに美浜３号機再稼働する

　　　　　　　　　 （観音寺市）篠原俊則

 

 ・それはもう見事に灰になり母一世紀を走り抜けたり

　　　　　　　　　 （太田市）川野公子

 

　▼コロナとの長い付き合いこれからと無期懲役の判決の如く

　　　　　　　　　　　（川崎市）小島　敦

 

 ・アカシアの倒木に立つ蚊柱に飛びつく山女の鰭光る見ゆ

　　　　　　　　　 （岩手県）千葉蘇一

 

 ・掌の上に止めた時間をふと浮かせ鋭く放つ石川佳純

　　　　　　　　　 （可児市）前川泰信

 

　▼食べる間もなかりきとまた弁当を持ち帰る子に在宅勤務遠し

　　　　　　　　　　　（町田市）村田知子

 

　▼見に行くな見ても喋るな拍手せよ腫物のごと聖火来県

　　　　　　　　　　　（大洲市）村上明美

　　

 ・渓川のカジカガエルは恋のとき銀鈴の音にひともうっとり

　　　　　　　　　 （大分市）岩永知子

 

　▼東京のパパはじしゅくで帰らないぼくは今年もブラックウイーク

　　　　　　　　　　　（藤枝市）石塚文人

 

　▼「県境を越えるな」と言い国境を越える五輪を止めない都知事

　　　　　　　　　　　（観音寺市）篠原俊則

 

 ・立ち漕ぎに坂ぐんぐんと登りゆく少年雲の峰へ近づく

　　　　　　　　　 （東京都）長谷川　瞳

 

 ・幸せに「なる」ではなくて「気づく」べしかく言えば向く怪訝そうな目

　　　　　　　　　 （和泉市）長尾幹也

                              

 

                                     (2021.8.10)