NO.447 「ごめんね」と百歳の義母旅立てり謝ることは一つもないよ [文芸(短歌・俳句) 時事]
随想コラム「目を光らせて」NO.447「朝日歌壇・朝日俳壇から」
「コロナを詠んだ歌人たち」
歌壇 期間:2021.6.6~6.13
「ごめんね」と百歳の義母旅立てり
謝ることは一つもないよ*
*題 目: 朝日新聞: 2021.6.13 朝刊 (神戸市)石川佳世子さんの入選作。
アオウ ヒコ
「朝日歌壇・朝日俳壇から」
このブログは朝日新聞の「歌壇・俳壇」の入選作の中から、最近
の事象を鋭い表現で切り取った作品を「歌壇]「俳壇」交互に精選
し、必要に応じて筆者がコメントを付けています。コメントは文
芸上の範を越えることがあります。
作品の頭に★印を付けた作品は時の政権が推進する前のめりの
右傾化路線や平和憲法を無視し国会の存在をないがしろにする様
を放置しておけぬとする市民の声であり、この悪弊を矯めたいと
する市民の意思表示であるとしてきました。
これらの作品はここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことな
く、全ての作品を本稿に採録してきました。
令和二年一月、何を契機としてその動きが始まったのかは不明
として、突如として地球に住む人類を無差別に襲った新型コロナ
ウィルスはいたるところで変容し続け、世界各地でその猖獗の勢
いは止まることなく、ひとの命を損ない、これまで営々として人
類が築いた世界の歴史と文化を根底から覆す様相を呈しています。
朝日新聞の読者たち、とりわけ歌壇・俳壇を支える歌人たちは
この新型コロナウィルスの動きに目を光らせ、自らの感性で人と
しての声を上げ始めています。この動きを「コロナを詠んだ歌人
たち」として捉え、作品の頭に▼印を付けて識別、この疫病がい
かに人類社会の日常に深刻な影響を及ぼしたかを見究め、令和2
年のウィルス禍が人類社会に及ぼしてゆく変化を知るよすがにし
たいとしています。 文中敬称は省略しています。(筆者)
朝日歌壇 2021.6.06
・三味の音が聞こえてくればもう林道熊よけ鈴をザックにしまふ
(仙台市)二瓶 真
・新梢を五月の空から手繰り寄せ棚を這わせる葡萄の作業
(川越市)西村健児
・今はもう鶏を飼う人もなき田舎の朝を牡雉が告ぐ
(五所川原市)戸沢大二郎
▼寡黙なる人で溢れるコロナ禍のハローワークと云う密に居る
(神戸市)池田雅一
▼コロナからスピンオフした変異株土竜叩きの土竜の如く
(筑紫野市)二宮正博
★決断の出来ぬ総理は常に言う「総合的に判断する」と
(観音寺市)篠原俊則
・姫女苑と春紫苑との見分け方とんと興味のなさげなあた
(横浜市)佐々木ひろみち
・にんげんの巣ごもる昼を晴れ晴れと郭公来鳴く五月の森に
(仙台市)沼沢 修
▼図書館へ美術館への習慣が一年途絶え眼の衰へぬ
(岐阜市)金子秀重
・仏明内、極楽内を過ぎて道はクマガイソウの山へ入り行く
(八尾市)水野一也
★
朝日歌壇 2021.6.13
▼蜘蛛の糸みたいに細き電話線ワクチン求め犍陀多になる
(さいたま市)箱石敏子
▼年寄りはインターネットは扱えず電話も通じぬワクチン予約
(三郷市)木村義煕
▼宝くじよりは増しかと掛け直すコロナワクチンコールセンター
(さいたま市)吉田俊治
▼二日間に千五百二回電話してやっと取れたよワクチン予約
(つくば市)江原正純
▼結局はワクチン獲得戦争に負けたということ早い話が
(五所川原市)戸沢大二郎
▼ワクチンの予約四日目昼ごろつながりて「五月六月終了しました」
(枚方市)鍵山奈美江
▼コロナの世しか知らない子供たちが歩き出し話すようになった
(東京都)上田結香
★薬莢を拾うただけで野兎のごと撃たれたる日の不条理変わらず
(名護市)玉城 光
・治療仲間久ちゃがひとりで亡くなりて久ちゃの声が耳を離れず
(飯田市)草田礼子
・寝てる間に帰ってくれと言う母の「夕焼け小焼け」の流るる施設
(東大阪市)池中健一
・閉店に勝手ながらと書く店主行間にあるそのやるせなさ
(東京都)三神玲子
・菖蒲東風カタカタカタと語り合う竹と竹とが肩寄せ合って
(白井市)関根孝明
◎「ごめんね」と百歳の義母旅立てり謝ることは一つもないよ
(神戸市)石川佳世子
★ しゃが
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