目を光らせて NO.448-2 プラ芥に慄へたりとぞ憧れて海女となりしひと潜き始めて [文芸(短歌・俳句) 時事]
随想コラム「目を光らせて」NO.448-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」
「コロナを詠んだ歌人たち」
歌壇 期間:2021.7.18~7.25
プラ芥(ごみ)に慄(ふる)へたりとぞ憧れて
海女となりしひと潜(かづ)き始めて*
*題 目: 朝日新聞: 2021.7.18 朝刊 (宗像市)巻 桔梗さんの入選作。
アオウ ヒコ
「朝日歌壇・朝日俳壇から」
このブログは朝日新聞の「歌壇・俳壇」の入選作の中から最近
の事象を鋭い表現で切り取った作品を「歌壇]「俳壇」交互に精選
し、必要に応じて筆者がコメントを付けています。コメントは文
芸上の範を越えることがあります。
作品の頭に★印を付けた作品は時の政権が推進する前のめりの
右傾化路線や平和憲法を無視し国会の存在をないがしろにする様
を放置しておけぬとする市民の声であり、この悪弊を矯めたいと
する市民の意思表示であるとしてきました。
これらの作品はここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことな
く、全ての作品を本稿に採録してきました。
令和二年一月、何を契機としてその動きが始まったのかは不明
として、突如として地球に住む人類を無差別に襲った新型コロナ
ウィルスはいたるところで変容し続け、世界各地でその猖獗の勢
いは止まることなく、ひとの命を損ない、これまで営々として人
類が築いた世界の歴史と文化を根底から覆す様相を呈しています。
朝日新聞の読者たち、とりわけ歌壇・俳壇を支える歌人たちは、
この新型コロナウィルスの動きに目を光らせ、自らの感性で人と
しての声を上げ始めています。この動きを「コロナを詠んだ歌人
たち」として捉え、作品の頭に▼印を付けて識別、この疫病がい
かに人類社会の日常に深刻な影響を及ぼしたかを見究め、令和2
年のウィルス禍が人類社会に及ぼしてゆく変化を知るよすがにし
たいとしています。 文中敬称は省略しています。(筆者)
朝日歌壇 2021.7.18
▼開きさえすれば国中が熱狂しコロナのことは忘れてくれると
(江別市)成田 強
何を開くのか、五輪とパラをですよ
▼政権が人の命を賭け金にこのルーレット回し始めた
(東京都)十亀弘史
・山刀伐(なたぎり)に猿羽根(さばね)、主寝坂(しゅねざか)ふるさとを囲む峠
は深緑の中 (仙台市)沼沢 修
・瓶内に氷砂糖のはや溶けて梅のゆるりと焼酎に浮く
(日立市)加藤 宙
◎プラ芥に慄へたりとぞ憧れて海女となりしひと潜き始めて*
(宗像市)巻 桔梗
・艫綱(ともづな)に船に海藻とりついて十年経ちぬ被曝の漁港
(いわき市)馬目弘平
・川底を浚(さら)ふ工事が春にあり蛍出ぬ夏ただただ暗し
(広島県府中市)内海恒子
・伸行の白く柔らかい指の奏でるリストのピアノ目つむりて聴く
(名古屋市)えぐれ笹島
・育てたる花盗まれし園児らの立札「たいせつにそだててください」
(さいたま市)齋藤紀子
▼二十ものマスクが朝から草を刈る誰が誰だかわからぬままに
(名古屋市)堀江順宏
★角が立たぬようにやんわり釘を刺す決定権はない分科会
(福島市)安斎真貴子
▼骨と皮ばかりの腕にワクチンの注射の針が筋肉探す
(大和市)高橋スミ
▼二人とも介護の職に就く夫婦二台の車揃ふことなし
(酒田市)朝岡 剛
▼父さんがいるから生きる、お互いが生きる意味となる九十半ば
(箕面市)森田美智恵
▼コロナ後も人と人との距離感はこのままでいい恋しいくらいが
(出雲市)塩田直也
★
朝日歌壇 2021.7.25
・みちのくに転勤の日々いま活きて妻に振る舞う蕎麦打つわれは
(仙台市)沼沢 修
▼「今,会社」受話器の声も遠すぎる夜の十時に独り息子は
(福山市)倉田ひろみ
・母が言う三人の姉つぎつぎと一言申す四女のわれに
(横浜市)武市治子
優しいお姉さんたちの伝承が下りてくるならいいですがね。
・上り來る銀鱗の鮎ダムなればみな上りゆく階段魚道を
(逗子市)織立敏博
▼マスクして歌う「ゆずり葉合唱団」宵待草の寂しい黄いろ
(神戸市)町田冨美子
▼観客もまばらな春の運動会両親プラス一人の通知
(対馬市)神宮斉之
・風やみぬ庭樹に抱卵の鳩一羽彫像のごと月かげに見ゆ
(一宮市)松久保美恵子
★「安倍晋三研究」書いて欲しかった立花隆の知を結集して
(東京都)三神玲子
★赤木俊夫の良心示す「赤木ファイル」上司生き延び巨悪は黙る
(山梨県)石原 学
▼宇宙服もどき防護着に面会す介護施設はもはや月面
(甲府市)高瀬孝人
▼半白の頭をならべ接種待つ連帯感をはつか纏(まと)ひて
(町田市)村田知子
▼ああ日本、立花隆の死去よりもトップニュースはパンダの出産
(西宮市)澤潟和子
▼刻まれし二十万余の人の名のひとつひとつを雨ぬらしゆく
(諫早市)藤山増昭
・オリーブは黒と緑のどちらが好きそう問うあなたのほほえみが好き
(東京都)清水真理子
・時を待ち人を待ちゐしことありき夕闇に半夏生(はんげしょう)ほの白し
(東京都)村上ちえ子
▼咎人(とがにん)の移送のごとく人目避け厳重警備の中聖火行く
(さいたま市)大浦 健
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アオウ ヒコ
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