目を光らせて NO.448 梅干しの瓶のラベルは剥がれないように洗いぬ亡き祖母の文字 [文芸(短歌・俳句) 時事]
随想コラム「目を光らせて」NO.448「朝日歌壇・朝日俳壇から」
「コロナを詠んだ歌人たち」
歌壇 期間:2021.7.4~7.25
梅干しの瓶のラベルは剝がれないように
洗いぬ 亡き祖母の文字*
*題 目: 朝日新聞: 2021.7.11 朝刊
(奈良市)山添聖子さんの入選作。
アオウ ヒコ
「朝日歌壇・朝日俳壇から」
このブログは朝日新聞の「歌壇・俳壇」の入選作の中から最近
の事象を鋭い表現で切り取った作品を「歌壇]「俳壇」交互に精選
し、必要に応じて筆者がコメントを付けています。コメントは文
芸上の範を越えることがあります。
作品の頭に★印を付けた作品は時の政権が推進する前のめりの
右傾化路線や平和憲法を無視し国会の存在をないがしろにする様
を放置しておけぬとする市民の声であり、この悪弊を矯めたいと
する市民の意思表示であるとしてきました。
これらの作品はここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことな
く、全ての作品を本稿に採録してきました。
令和二年一月、何を契機としてその動きが始まったのかは不明
として、突如として地球に住む人類を無差別に襲った新型コロナ
ウィルスはいたるところで変容し続け、世界各地でその猖獗の勢
いは止まることなく、ひとの命を損ない、これまで営々として人
類が築いた世界の歴史と文化を根底から覆す様相を呈しています。
朝日新聞の読者たち、とりわけ歌壇・俳壇を支える歌人たちは
この新型コロナウィルスの動きに目を光らせ、自らの感性で人と
しての声を上げ始めています。この動きを「コロナを詠んだ歌人
たち」として捉え、作品の頭に▼印を付けて識別、この疫病がい
かに人類社会の日常に深刻な影響を及ぼしたかを見究め、令和2
年のウィルス禍が人類社会に及ぼしてゆく変化を知るよすがにし
たいとしています。 文中敬称は省略しています。(筆者)
朝日歌壇 2021.7.04
・タクシーにて行先言うにろれつ回らず運転手さん困りわたしも困る
(和泉市)長尾幹也
▼迫り来る五輪を前に期待せり小池都知事のちゃぶだい返し
(東京都)北条忠政
多くの人が五輪中止になるのではないかと小池さんに期待していた時期があった。
▼ワクチンの接種を終えし人来れば副反応を皆が聞きに
(川崎市)川上美須紀
・ここはどこ助けてくれとコールありかける声なく布団かけ直す
(横浜市)太田克宏
・東山魁夷の絵筆一心に白馬を点じ緑響かす
(熊谷市)内野 修
・流れ星の気分になってこいでゆく新しい自転車は夜空色
(奈良市)山添 葵
▼東京へ来ないでよりも東京に来ないでの方が少し険ある
(大和郡山市)四方 護
・好きになれぬ職に就く暇人世になしと唯一子に言い残す
(和泉市)長尾幹也
▼死化粧も花読経もなくコロナ死の義母の棺を離れ見送る
(川越市)津村みゆき
・言わないで泣いちゃうからと小一の孫の悲しみ愛犬の死
(宇都宮市) 菱沼芳子
▼「無茶振り」の語が新広辞苑に入りて五輪・パラリン開催を言ふ
(前橋市)荻原葉月
▼地下室に隠れて住んでいるような自粛生活明けない闇夜
(札幌市)住吉和歌子
▼「顔を見せろ」とうるさかった実家にも「帰って來るな」と云わせる
コロナ
(東京都)上田結香
★
朝日歌壇 2021.7.11
・独り居で声出し自分と会話するバイリンガルだと話がはずむ
(アメリカ)大竹 博
◎梅干しの瓶のラベルは剝がれないように洗いぬ亡き祖母の文字*
(奈良市)山添聖子
・「愛」には有り「名曲」には無き賞味期限 昭和歌謡を台所で歌う (新潟市)江口康子
▼ワクチンは済んでいるかとまず訊ね一年延ばした床工事頼む (アメリカ)大竹幾久子
▼ご長寿の秘訣を問へばにこにこと「一笑一若、一怒一老」 (柏 市)藤嶋 務
★とうとうと半世紀前の思い出を語る首相は「今」を語らず (大阪府)藤田陽子
▼だいじょうぶおまえはだいじょうぶだから暗示をかけて夫先に逝く (香芝市)大畑むつみ
▼何処にでもリーダーは居て偉そうに喋るリーダーの鼻出し
(近江八幡市)寺下吉則
・茨咲く道ゆきゆきて廃校の美術館ありホトトギス鳴く
(福島市)美原凍子
★苦しそうな声上げながらたくさんの隠し事飲み込むシュレッダー
(稲沢市)山田真人
・香が好きと在りし日植えしラベンダー摘みて匂へる妻を恋ひをり
(浜松市)松井 惠
▼慣れすぎてもう戻れない気がしてるマスクをせずに授業
(滋賀県)木村泰崇
▼乾杯はノンアルコールノンハワイ小さなテラスで人前式
(豊中市)北原則子
ちいさな結婚式を挙げなさったようだ。
▼病む妻もわれも二度目の接種終え車椅子押し家路を辿る
(舞鶴市)吉富憲治
▼現代の関所のごとき入口の体温計に額差し出す
(熊本市)柳田孝裕
代官はヌット差出し、チラッと見て、よしとのたまう。
★
随想コラム 目を光らせて:so-net
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アオウ ヒコ
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メッセージ 2021.10月;
★埼玉 狭山市のアオウ ヒコです。お変りなくお過ごしのことと存じます。
9月は日本全国が諸外国からの競技者の到着があり、五輪ドームではまあまあの開会式があり、各地の競技施設で熱心にオリンピックおよびパラ競技が行われ、ほぼ順調な推移を見ました。後半には陸上競技のアスリートが冷たい雨がドームの走路を濡らす中を駆け抜け、それぞれに大盤振舞いのメダルの授与に与かりました。
日本国民は巨大施設での観戦がままならず、折からのコロナウイルスの猖獗を避けるために、それぞれ家に籠ってのTV観戦をもっぱらにしたことでした。
★コロナウィルスの猖獗ぶりはとまりませんでした。地元では8月の中旬に週二回火、金の午前中に実施されていた高齢者向け「百年体操の会」が中止になり、以来無聊の朝が続いております。 ワクチン注射は比較的早く1,2回とも打ち終えました。それでも、マスクは放すことなく、密を作らず、ひっそりと屋内で生きている毎日です。
★わが家の裏庭越しに、市道の向こうにあった地所がMリハウスによって新しく住宅地として整地され、新築戸建2棟の基礎造りから始まる二階建て住宅の建設が一から始まるのもこの期間でありました。さまざまな重機が出入りして稼働するのを手前のわが家のベランダから見るのは実に楽しく、施工から完工に至るまでに発する様々な工事音も、結構楽しめたことでした。
★雨勝ちの日が多く、つる薔薇や庭仕事に出る機会が減りました。庭のつるバラは連日の降雨で葉枯が目立ち、庭の柿の木の実付きが滅法悪いのが残念です。昨年来丹精中の「皇帝ダリア」はいまや背丈2メートルを越え、花芽の準備中らし、こちらは順調です。
★さて、今回の「目を光らせて」はその対象を「朝日歌壇・俳壇」投稿者の動きをコロナウィルスへの関心と言及を主に選考、継続しております。
「今回「随想コラム」「目を光らせて」の題目はつぎのとおりです。
NO.448 梅干しの瓶のラベルは剥がれないように洗いぬ亡き祖母の文字
NO.448-2 プラ芥に慄へたりとぞ憧れて海女となりしひと潜き始めて
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随想コラム 目を光らせて アオウ ヒコ
(2021.10.05)
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