随想コラム 「目を光らせて」 NO.418 朝日歌壇朝日俳壇から」            


       俳壇  期間20198.4~11


   そのなかに末期の声も蝉時雨 


      題 目: 朝日新聞2019.8.18 


            合田 豊さん(善通寺市)の入選作。     


              アオウ ヒコ


                  

          鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


         「ありがとう。おもしろかった。」から   


           作品 その29 DSC-204


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんな


ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので


絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


皆様、ご多幸を」木谷 啓


              「朝日歌壇・朝日俳壇 から」(趣意)


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で


 切り取った作品をそれぞれに精選し、必要に応じて,コメントを付


 けています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。


 作品の頭に印が付いた作品は時の政権が推進する前のめりの右


 傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにする様


 を放置してはおけぬとする市民の声であり、これを矯めたいとす


 る意思表示でもあります。これらの作品はここでは個々の作品の


 文芸上の軽重を問うことなく、全ての作品を漏れなく本欄に採録


 しています。


 


  また、これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに


  読者の耳,素直に反応されることを願っております。 


  文中、敬称は省略しています。(筆者)


                 


  


      朝日俳壇 2019.8.04


                       





            


                   薔薇 11


 


                           


   夏蝶の番う無風の牧場かな


 


          (ドイツ)ハルツォーク洋子 


 


 蝶はどの程度舞い上がって番うのか。雌雄の接近を邪魔する風があれ


あの強靭な羽も太刀打ちできないのか。今日は幸いにも無風だ。ドイ高原


の牧場に舞う夏の蝶。宙空に舞うカップルは一つならずして数多の夏蝶が


舞いしきるのか。


 


    蝉鳴かせ脈打つごとき大樹かな


           


         (八代市)山下しげ人


 


 夏の大樹には蝉が群れて斉唱する。その下で耳を澄ませれば誰かの指


下に脈打つ斉唱があることを感じる。音程の変化は大樹であるからはなく


蝉に指揮者がいるからである。


 


  アルプスの麓ぎりぎりまで青田  


         


         (長野市)縣 展子


 


  鐘の音に連れて蜩東山


             


          神戸市) 岸田 健


 


   船遊淡海は神の掌


             


       神戸市) 涌羅由美


 


  かつて若い時代を淡海で過ごした女人から淡海の国、湖の魅力を聞かされ


たことがある。故あって故郷に戻ったが、離れがたい土地だったと述懐した。淡海の湖に遊べば、あたかも神の掌に乗った思いに満たされる、とする作者


の思いに似るではないか。しばらくでも神の掌で過ごした女人に倖せあれ。


                      


   一湾に一点ともす夜釣りの灯


             


        西宮市) 黒田国義 


 


   振り払ふ不安払へぬ明易に


 


    大牟田市) 平井裕子


  


  峰雲の峰と言ふ峰湧き上がる


 


      長野市) 縣 展子


 







                      薔薇 12


 


   稲株に食らひつきたる稗を切る


            


        和歌山県日高町) 市ノ瀬翔子


 


 稗はひえ、である。稲田の夏の雑草取り、稲株に食い込んだヒエの根を見つ


けたときはこの憎き雑草め、と心から怒ったようだ。


 


  走り根の隆々たるや木下闇


           


       深谷市) 岩熊史城


 


 


  白南風の岬へ子らを放牧す


 


       鶴ヶ島市) 横松しげる


 


   さよならに始まる妹の遺書涼し


 


       泉大津市) 多田羅初美


 


   揚花火忍者のごとく上りゆく


 


      (浜松市 大平悦子


 


   漆黒の森より立ちぬ天の川


 


       仙台市) 柿坂伸子


 


 夜が来てあたりの森は漆黒の闇、視線を上に挙げれば、空は天の川の星々


 


銀河がいっぱいに拡がる。なんと素敵なところにお住まいか。 


 


 


         朝日俳壇 2019.8.11


 





                               ばら 13



  集い来しひとりひとりの梅雨湿り


 


       今治市) 横田青天子 


 


 句会の日、会員が次々に顔を見せる。いずれも梅雨空の中、雨具と共


 


にやってきたから、それぞれに雨の匂いを纏っている。


 


  芙蓉閉じ今日の倖せ又あした


 


      北海道音更町) 信清愛子


 


 酒を嗜み、釣りを好み、花作りに精を出す近隣の I さんの庭にはいま芙蓉の


 


大木が真っ盛りだ。美しいなあ、この芙蓉いいなあと褒めそやすと「いや、これ


 


は酔芙蓉スイフヨウ、朝の白が夕に桃色へと変わる。寒さには弱いよ」と言い


 


ながら、根付きの苗を一本呉れることになった。さてわが庭のどこに植えるか。


                   


 戦争が老いてゆくなり終戦日


 


     (東京都)吉田かずや


 


 原爆と原発あはせ語る夏


 


      (西海市)原田 覚


 


   逝く夏や母との記憶次次と


 


    (船橋市)斉木直哉


 


  炎帝に面伏せ畑の笠進む


 


    (新潟市)嘉代祐一


  


 死に票を投じて戻る西日中


 


    (名古屋市)池内真澄


 


  空蝉の背に一行詩ありにけり


 


    (大村市)小谷一夫


 


  夕蝉の聲波となり風となり


 


    (伊万里市)田中南嶽


 


  午前三時西瓜食み食み授乳かな


 


    (下関市)内田恒生


 


 蝉しぐれ「世論」のように数日間


 


    (国分寺市)武藤 幹


 


 


     (つづく → 418-2)


 


 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX


随想コラム[目を光らせて]so-netブログ


  URL:http://columneye.blog.so-net.ne.jp/