随想コラム 目を光らせて NO.417「朝日歌壇・朝日俳壇」ら。


      歌壇 期間:20197.77.14


 


 


    六尺の青大将を屠りたる雉子


 


   昂然と大地をゆけり雉子きじ


 


          題目;朝日新聞:2019.7.21


              青木崇郎さん(福島市)の入選作。


                            アオウ  ヒコ


 


          鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集   


           「ありがとう。おもしろかった。」から


                 作品 28


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんなも


のでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので絵を


描ける間は描き続けられるといいなあと思います。皆様、ご多幸を。


 (木谷 啓)                   


   「朝日歌壇・朝日俳壇 から」(趣意)


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で


 切り取った作品をそれぞれに精選し、必要に応じて,コメントを付


 けています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。


 作品の頭に印が付いた作品は時の政権が推進する前のめりの右


 傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにする様


 を放置してはおけぬとする市民の声であり、これを矯めたいとす


 る意思表示でもあります。


    これらの作品はここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うこと


 なく、全ての作品を漏れなく本欄に採録しています。


 また、これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに


 読者の耳,素直に反応されることを願っております。 


  文中、敬称は省略しています。(筆者)


 


 


        朝日歌壇 2019..07


                     



                        薔薇 


 


年金が命綱だという人は登場しない国会中継   


      (筑後市)近藤史紀


100万に驚き200万デモを羨む 香港の若者たちよ   


      (近江八幡市)寺下吉則


大規模デモが政府の方針変えさせた驚きと希望この


 に無縁か   鈴鹿市) 森谷佳子


  同世代とわかれば後は一本道話題は脱脂粉乳の味                      


          神戸市) 高寺美穂子


  あがかずに逝きたく思へど叶うまじあがく末期を数多見て来し    


          (三原市) 岡田独甫 


 命が肉体から離れる時はそうすんなり行くものではない。生あるものは人に


らず末期苦しみを残して旅立つようだ。この作者は寺の和尚だから、多くの


人の末期に立ち会い、あがき苦しむ姿を見てきた。自分ははあがかずに逝きた


いと思うのだが、どうもそうはいくまい、叶うまじと諦めている。


 


憲法はアクセルじゃない逆走と暴走防ぐ非常ブレーキ 


     和歌山市佐武次郎


 



ばら   


生きるとはこういうことだ「香港の自由守る」百万のデモ


      春日井市)伊東紀美子


 


「チョットコイ」と鳴く小綬鶏に誘われて林に


  入ればまだ積む汚染土


      福島市)澤 正宏


 


 ありがとうごめんなさいと介護するもしかしてこれ


  黄金の日々   東京都篠原めぐみ


 


 この言葉を歯科医院の女性看護師の口からも、しばしば聞くように思


う。作者は老人病院の介護士か。この言葉を口にして日々介護にあたれ


ば、老患者はおとなしく身を任せてくれる。こんなに楽なことはない。


むしろ、黄金の日々ではありますまいか。


 


下北の菜の花の咲く横浜の山の向うの村の原発 


      三沢市)遠藤知夫


 


 青紅葉ひかり透かして清らなり昼飲みちょっと


  後ろめたいな     三田市)相良 たま


 陽の光が青紅葉を透かして清らかな緑を滴たらせる昼さがり。この


称えてひと時、酒盃を上げんかな、とするのはどうだろう。後ろめ


い思いもするが、いけませんかな。この機会を逃すのは本当に惜しい


のです。


 


          朝日歌壇 2019..14 



                       バラ  

 


笑み浮かべ棺に深く眠る兄予科練のことついに語らず


     (神戸市)森山 功


            


ノモンハンガダルカナルにインパールレイテオキナワ


 ヒロシマナガサキ   (八王子市)間渕昭次


 


 ああ、こうして地名をカタカナにして羅列しただけで、太平洋戦争の


無惨な傷跡が次第に膨らみ、遂には我が国の敗北へと移り行くのを思い


知る。最後はピカドン2発でとどめを刺されて。


 


せかせかと読み急ぎゆく総理大臣しみじみ語る


  声が聞きたし   (水戸市)檜山佳与子


 


 百の桶百のしろたへ流れをり国崎ゆかしき鮑と海女と


      (津市)中山道治


 


原発をある日突然語り出し今は記憶に鍵かけし母


     (久留米市)塚本恭子


 


 餓鬼岳の雪消の水が音立てて乳川に奔る安曇野の初夏


     (熊谷市)飯島 悟


 


  父が逝き呼ばれるように母も逝きわたしはひとり


  介護ロスの日々      (前橋市)町田 香


 


 晩年の父母の介護に専念してきた私の十数年。その対象の父が逝き、


そして母が続き、二人が居なくなった私一人の日々。そこに在ったもの


がきれいさっぱり消え失せた今、介護ロスに包まれる日々に生きるこの


私。無常なり。


 


 鮎料る男の貌の美しくときにせせらぎ聴き澄ますなり


     (京都市)田畑益弘


 


 「しぶとし」は命に向くる褒め言葉告げられし余命


   三月超えたり      (春日井市)新海広之


 


 あなたの命はしぶといようですな、とかかりつけの医師が褒めてくれ


たので、図に乗って「どのくらい?」と訊けば、「そう三月くらいは」


と答えてくれた。わが命、しぶとく生きて、そう、天城越えならぬ三月


越えを過ぎ、まもなく百日に手が届く。嬉しいことなり。 


                     



       (つづく → NO.417-2)


 


                ★


 


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